慢性疲労症候群 

1)疲労とは

慢性疲労症候群の話に入る前に、まずは疲労について考えてみます。近年、疲労は、痛み、発熱と並んで生体の3大アラームと言われ、身体にとって生命と健康を維持する上で重要な信号のひとつであることが判ってきました。健常者における生理的疲労とは、精神あるいは身体に負荷を与えた際に作業効率(パフォーマンス)が一過性に低下した状態と定義されています。 通常、休息を求める欲求と共に、いわゆる倦怠感を伴うことが多くあります。

疲労の研究は、1998年に厚生労働省が行った疫学調査の結果がきっかけとなり現在も国家レベルで進められています。この調査によると日本人の3人に1人が半年以上も慢性的に疲れていて、作業効率の低下を感じていたとのことで、日本は「疲労大国」と言ってもおかしくない状況であることが明らかになりました(下図 参照)。

このような状況を打破するために、日本では世界に先駆けて疲労究が進んでいます。2005年に日本疲労学会が立ち上がり、大阪市立大学や理化学研究所などが中心となって研究がすすめられてきました。そのような研究のお蔭で、疲労の正体が少しずつ明らかになってきました。

2)慢性疲労症候群とは

 1988年に米国の疾病対策センター(CDC)により新しい疾患、「慢性疲労症候群」として報告され、ただの疲れでは説明できない重症の疲労を訴える人々が居ることが確認されました。

日本では1990年に大阪大学医学部付属微研病院の木谷照夫教授らにより初めて患者が報告されました。その後、1991年から1998年まで厚生省疲労調査班(班長;木谷照夫)による調査が実施されました。1999年から2005年の6年間には文部科学省科学技術振興調整費による班研究(代表;渡辺恭良)が26の大学・研究機関で実施されました。
 
これらの研究を引き継いで、2005年から2009年には文部科学省21世紀COEプログラム「疲労克服研究教育拠点の形成」(代表;渡辺恭良)として、疲労のメカニズム、定量化、疲労克服策に関する研究が推進されました。また、臨床においては診断基準の作成が進められ、2009年から2012年の厚労省科研費「慢性疲労診断指針の作成」研究班(班長;倉恒弘彦)により現在の基準が作成されました。

以上の研究の進展により、現在日本では推定約30万人の患者が存在すると言われています。また、米国では100~400万人に上ると言われています。

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